パンク状態

入国審査官が常駐していない地方空港にチャーター便で訪れる外国人観光客が急増し、法務省入国管理局が審査官のやり繰りに頭を悩ませているという。特に、北海道では最近5年間でチャーター便数が10倍になり、館内の審査官だけでは間に合わず、遠方から応援派遣することも度々あるそうで、国や地方自治体は観光立国を掲げ外国人観光客の誘致に躍起だが、受け入れ態勢が負い付かない状況だという。
全国のチャーター便の6割が北海道に集中しているが、海外から定期便のない旭川、釧路、帯広の各空港には入国審査官が常駐していない。だが、この3空港へのチャーター便は、2004年に48便だったのが2004年には約10倍の464便にのぼった。3空港にチャーター便が来る度に、札幌入国管理局を中心に道内5カ所の出張所からやり繰りし、足りない時は成田空港から応援を派遣して貰うこともあるという。
2003年開港の能登空港では、一昨年から週2回、台湾からのチャーター便が発着し、運航期間が一昨年は4カ月間だったのが、昨年は6カ月半と長くなった。同空港に審査官を派遣する名古屋入国管理局金沢出張所は、海外からの定期便がほぼ毎日ある小松空港にも派遣しいおり、名古屋からも応援を頼むそうだ。台湾から1000人近くが乗る大型観光客船が不定期に入る沖縄県石垣島・石垣港や宮古島平良港も常駐審査官では足りず、入港時に那覇支局から出張している。
法務省は今年度、北海道を中心に審査応援班として10人以上の入国審査官を増員する計画。一方、政府は2010年までに日本を訪れる外国人旅行者を1000万人以上に倍増させる目標を掲げているが、現場からは「対テロもあり入国審査は疎かに出来ず、態勢が十分整っていない状況のまま外国人観光客を誘致するのは問題だ」との声も出ている。
外国人の新規入国者は1990年には300万人足らずだったのが、2003年には500万人に近づいた。これに伴い、1995年度に1152人だった入国審査官も今年度は1433人に増えている。
2003年に政府が決定した「観光立国行動計画」では、入国手続きの円滑化も求めており、増員に併せ審査の効率を良くする試みも始まっている。
愛知万博博覧会の際、「事前確認(プリクリアラス)」も実施。外国の空港に入国審査官を派遣、出国時に日本での上陸拒否の対象者を確認し、入国時には審査も簡単に出来るメリットがある。愛知万博博覧会期間中は韓国と台湾に4人ずつ、審査官を派遣し、入国時の時間が半分に済んだという。今年2月末で終了するが、法務省は引き続き来年度以降も導入を検討するという。