首相の一声

国土交通省が思わぬ「小泉首相の一声」に困惑気味だ。小泉純一郎首相が一大事業に号令を出した。
小泉首相は東京・日本橋の景観を美しくする為、橋の上を跨り、川に沿って走る首都高速道路を移設するという計画を総理任期中に纏めたい意向のようだ。昨年末の12月26日には官邸に高速道路の権威である中村英夫武蔵工大学長(土木工学専攻)、奥田碩日本経団連会長、作家の三浦朱門氏の3人の他に伊藤滋早稲田大教授(都市計画専攻)が呼ばれ、首相の私的な有識者懇談会を発足させた。

如何やら完全に首相の思い入れのようで任期中、郵政民営化などの改革では足跡を残した小泉首相だが、形に残るモニュメントがない。空港や道路を造るのでは田中角栄的でインパントがない。青空やきれいな川を取り戻す事業ならば小泉首相らしい。
それにしても、何故、日本橋なのか? 関係者の話では「小泉首相は歌舞伎など日本の伝統文化や歴史に拘りがあり『江戸時代の五街道の起点なのに美しくない』と言っていたと話している。更に首相は周辺に「実現したら文化都市・東京のシンボルになる」と語っているという。正に環境・景観・文化を前面に押し出した「小泉記念碑」という趣向だ。
韓国の首都ソウルでは、次期大統領候補に名前の挙がっている李明博(イミョンバク)市長が都心の清渓川(チョンゲチョン)を覆っていた高速道路を約425億円かけて撤去。昨年10月には、せせらぎを復元した。小泉首相は「韓国で出来るのだから、日本でも出来る」とハッパを掛けているという。然し、日本橋の場合、コストは膨大だ。第1次小泉内閣当時の扇千景国土交通相(現参院議長)が設けた有識者会議は2002年4月、首都高を
日本橋川の地下を通す
②両岸のビルの中か地下を通す
日本橋を通らないルートに変更する
の3案を提言したが昨年末の推計では、総工費は3000億〜6500億円掛かる見込みだという。
因みに、この金額を「開かずの踏切」対策に使えばどうなるか国交省に由ると、1時間に40分以上閉じている踏切は全国611カ所あり、立体交差化に掛かる工費として1カ所で平均50億円低度というから、1〜2割が改修される計算だ。
国土交通省の担当者は「財政難の折、政府の金を注ぎ込むのは難しく、募金か積み立てか、何れにしても国民の理解が必要だ」と小泉首相の一声に困惑しているという。
それにしても首相の思い入れで3000億〜6500億円を使われたら困るよね。確かに気持ちが分からない訳ではないのだが借金が莫大な日本政府がやることは他に有るように思えるのだが・・・。
東京都民が納得しても他の道府県民が黙っちゃいないだろう。