エボラ出血熱で絶滅危機

アフリカ中西部のコンゴ共和国で、エボラ出血熱のためゴリラ(ニシローランドゴリラ)が大量死したことが独マックスプランク研究所などの調査で判り、8日付の米科学誌サイエンスに発表された。感染が広がった同国のロッシ保護区西部では、5000頭以上がここ5年間でほぼ全滅したと推定。アフリカ中西部は最大のゴリラ生息地で、同研究所は「絶滅の恐れが急激に高まっている」と指摘している。
エボラ出血熱エボラウイルスが原因の感染症。頭痛や筋肉痛の後に体内で大量出血し、致死率が高いことで知られる。アフリカのサハラ砂漠より南で流行している。
研究チームは、同国とガボンの国境付近の住民にエボラが流行した2001年以降、人だけでなく周辺の森でゴリラも相次いで死んだことに注目。流行地に近いロッシ保護区やその周辺でゴリラの感染や生息状況を調査。その結果、同保護区西部では、エボラ流行前に1平方キロ当たり約2頭生息していたゴリラが、ほとんど観察できなくなった。また、2002年10月から4カ月間に個体識別できた143頭中、130頭がエボラのため死んだとみられ、致死率は90%を超えたという。
ゴリラは森林伐採や農業などの影響で生息地を奪われ、国際自然保護連合(ICUN)の絶滅危惧種に登録されている。世界自然保護基金WWF)ジャパンによると、3種類の亜種の合計で数万頭しかいないとの推計もある。ロッシ保護区は他の生息域より生息密度が数倍高い地域だった。
同研究所のピーター・ワルシュ博士は「狩猟で追い打ちがかかると、絶滅の恐れがさらに高まる」と警告している。