唯一の銀幕ゼロの県都

群馬県前橋市内で唯一の映画館「前橋テアトル西友」が、今月29日で閉館する。このことに由り前橋市は全国で、ただ一つ映画館のない都道府県庁所在地となる。来年4月には複合型映画館(シネマコンプレックス)が開業し、「映画館ゼロ」は解消される予定だが一時的にしろ、県都から銀幕が消える事態に地元映画ファンは寂しさを隠せないでいる。
1960年代ごろまで、前橋市は映画館が10館程ある「映画の街」だった。群馬県が出資した全国初の自治体製作映画「眠る男」でモントリオール世界映画祭審査員特別大賞を受賞した小栗康平監督や、全米で大ヒットしたホラー映画「THE JUNON/呪怨」の清水崇監督らの映画人も輩出した。然し、テレビ・ビデオの普及、レジャーの多様化などに伴って閉館が続出。近年も隣接する伊勢崎、高崎市に進出したシネコンに押され、2000(平成12)年9月に「前橋文映」、2003(平成15)年5月に「前橋オリオン」の老舗が閉館。テアトルも入居する専門店ビルがテナントの相次ぐ撤退などで閉鎖を決めた為に廃業を余儀なくされた。
映画製作大手4社でつくる日本映画製作者連盟に由ると、ピーク時の1960(昭和35)年に7,457館あった国内の映画館(スクリーン数)は、1993(平成5)年に1,734館まで減ったが、シネコンの隆盛で、2005(平成17)年末時点で2,926館に盛り返している。
都道府県庁所在地では、滋賀県大津市で1996(平成6)年に映画館がなくなったが、その後シネコンが開業した。全国の人口30万人以上の都市で映画館がないのは、埼玉県越谷市大阪府吹田市枚方市兵庫県西宮市の4市だけだという。