二重苦

耐震強度の計算書偽造問題で、マンション住民に対する補償の行方は依然不透明だ。建築主は「瑕疵担保責任」を負うことから、いずれも諸費用負担や買い戻しの意向を表明している。然し業者側が負担に耐え切れない場合は、住民側にしわ寄せが及ぶ可能性が高いそうだ。
民法の規定では、建物に欠陥があった場合の賠償などは「瑕疵担保責任」とされ、一義的ではあるが建築主が責任を負うことになっている。平成12年施行の住宅品質確保促進法では趣旨を強化し、建築主の責任を「販売から10年間」と定めた。業者側の対応は、こうした法規を根拠としている。
然し、ヒューザーのケースは複雑のようで、住民側に由ると、頭金分は来年3月15日には返還され、残りのローンはヒューザーが負担することになっているが、仮に同社が破産すれば住民が支払うことになるという。最悪の場合、債務を抱えた上に住む場所も失う「二重苦」に苛まれることになる。
国土交通省は、買い替え費用などを住民に低利融資する方向で検討を始めているが、財政支援が実現しても全負担を肩代わりする訳はないようで、今回の問題は責任の所在が網の目のように絡まっており、姉歯建築設計事務所は勿論のこと、偽造を見逃した確認検査機関、設計業者、建設会社などが損害賠償請求の対象になり得るが、責任の擦り合いをしている現状では、果たして解決への糸口が見えて来るだろうか。