映画「自虐の詩」

自虐の詩

今日、昨日公開された映画「自虐の詩」を観に行って来た。原作は週刊宝石で連載されていた同名の四コマ漫画
観る前はちゃぶ台返しのイメージしかなく、只、単に笑えるだけの映画だと思い過度な期待も何の予備知識もないまま、軽い気持ちで観に行ったのだが、映画を観てやられました。
確かに前半は夫に尽くす主人公・幸江と暴力ダメ夫・イサオのやりとりがコミカルに描かれているのだが、後半は幸江とイサオの愛の姿に泣かされます。笑いあり涙ありで、何より見た後に心が温かくなった。決して重くはないのに「幸せの形」や「人生」について考えさせられるような深い部分もあって観ていて飽きません。今年見た邦画の中では最も心に残った映画かも知れない。
役者さんも中々で日本一薄幸が似合う女優・中谷美紀さんが「嫌われ松子の一生」で演じた松子とは違った薄幸の主人公・幸江を演じています。元ヤクザで幸江の内縁の夫・イサオ阿部寛さんが演じ、今までのイメージとは打って変わって無口で不器用な内縁の夫を好演しパンチパーマが様になっています。亦、そんな不憫な生活を哀れみ、ちゃぶ台返しの回数までカウントしているヒマな隣人の後家さん(カルセール真紀)や、幸江に想いを寄せるラーメン屋の主人(遠藤憲一)、度々お世話になるお巡りさん(ミスターちん、金児憲史)など下町人情ものを彩るには欠かせない脇役陣もいい味を出しています。
他にも幸江の少女時代を演じた岡珠希さんや中学時代の友人・熊本さん役の丸岡知恵さんも中々で、ラストの再会劇にアッと驚く変貌ぶりを見せてくれる(大人の)熊本さんをアジャコングが演じてます。銀行強盗で逮捕されてしまう父親役の西田敏行さんの演技もスパイスが効いています。
冒頭、幸江が見とれる青いクラゲのダンスによるエンドロール後にとっておきのシーンが待っています。安藤裕子さんの歌「海原(くらげ)の月」もとても画面に合っており、騙されたと思って是非観て下さい。