時効の壁

1978(昭和53)年に東京都足立区立小の女性教諭(当時29歳)を殺害して自宅の床下に埋め、殺人罪の時効成立後の2004年に犯行を自白した同小の元警備員の男(70)らに、遺族3人が約1億8600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が26日、東京地裁であった。永野厚郎裁判長は、男が遺体を隠し続けた行為について、「遺族が故人を弔う機会を奪い、故人に対する敬愛・追慕の情を著しく侵害した」と述べ、男に計330万円の賠償を命じた。
一方、殺害行為については、民法上の「時効」が経過しているとして、賠償責任は認めなかった。
訴訟では、不法行為から20年が経つと賠償請求が出来なくなる「除斥期間」を適用するかどうか争点となった。遺族側は、「殺害と遺体の隠匿は一連の不法行為で、除斥期間の始まりは遺体発見時とすべきだ」と主張したが、判決は、「殺害と隠匿を一体的に評価することは困難で、殺人についての除斥期間の始まりは殺害行為の時点とせざるを得ない」と指摘し遺族側の主張を棄却した。
除斥期間とは一定期間の経過により、権利が消滅することを定めた制度。民法724条は不法行為に対する損害賠償請求権は、その行為が行われた時点から20年で消滅すると規定している。